みなさんはキャンプのギアをどう選びますか。ネットに情報があふれる時代、無数のレビューを見比べて、とりあえず無難なものを購入していた筆者。いつしか実物を手に取って選ぶ機会も少なくなりました。
そんな折、何気なく立ち寄ったのが個人経営のアウトドアショップ。選りすぐりのギアや珍しいガレージブランドなど奥深い世界が広がっていました。
ネットや量販店とは一味違う魅力を放つショップを巡る連載「ふらっとショップ探訪」。第5回は、大阪のファッション街にある「THE GROUND depot.(グラウンド・デポ)」2階のアウトドアセレクトショップを紹介します。
ファッション街からアウトドア文化を発信
大阪市西区南堀江にある立花通り、通称「オレンジストリート」。全長800m に及ぶ通り沿いには、ファッションやインテリアなどの店舗がずらりと並んでいます。若者を中心に新たな文化発信の地として注目されているエリアです。
その一角にあるセレクトショップ「THE GROUND depot.」が今回の訪問先。ガラス張りの洗練された店構え、その2階に目を向けると、都会に似つかわしくない大量の薪や大型テントが見えます。2022年3月、同店のリニューアルと同時にオープンしたアウトドアセレクトショップです。
ブッシュクラフトからUL(ウルトラライト)まで
店を切り盛りするのは西田匡朗さん(冒頭写真・右)と成山明宏さん。それぞれ元大手セレクトショップの店長、バイヤーとして経験を積みながら、共通の趣味だったキャンプを通じて意気投合。念願だったショップ運営をスタートさせました。
取り扱いメーカーは国内外の50種以上。定番のキャンプギアのほか、ブッシュクラフトやUL(ウルトラライト)、ヴィンテージなどジャンルに縛られない品ぞろえ。西田さんは「軽重や新旧を問わず、自信を持って推せる品をセレクトします。型にとらわれず好きなものを織り交ぜて自由に楽しんでほしい」と思いを語ります。
店に並ぶ商品のメーカーに偏りがないのは、ギアそのものの質を重視しているから。SOTOのガスバーナー、フュアハンドのランタン、ペトロマックスのHK500など、歴史と実績を誇る名品を数多く取り揃えています。
西田さんが手がけるオリジナルブランド「扉開人(トカイビト)」からは、ハンティングチェアとフォールディングスツールを展開。牛革の独特なシボ模様が特徴で、経年変化も楽しめる品です。
古き良きアウトドアギアとの対話
ひと際目を引くのは希少なヴィンテージ品の数々。ノースフェイスの寝袋ひとつとっても、1970~80年代製造の証しである「茶タグ」付き。アメリカ製ならではの質実剛健な風合いは現行品にはない魅力。
ほかにも、パタゴニアの前身ブランド「シュイナード・イクイップメント」のソロテント、MSRのデッドストックのバーナーなど、レアな品々が平然と置かれています。
「古いものにはスペックだけでは測れない深い味わいがあります。仮に経年劣化してもコーティングを剥がせば再生できる。手間を楽しみながらギアと対話するのもおもしろいんです」と西田さんは話します。
さらに注目したいのがユーズドのアウトドアウェアを集めたコーナー。古着屋で働いていた成山さんの経験を活かして厳選したアウターやフリース、Tシャツが並びます。「歴史的なストーリーを帯びた古着をまとってアウトドアを楽しむという選択肢も提案したい。最新のウェアと掛け合わせて楽しむのもありですね」と成山さん。
東京のリメイクブランド「redad(レダット)」に別注をかけて生み出されたグッズも見どころです。ユニークな配色のウェア、キャップ、湯たんぽカバーなどをラインナップ。
ノースフェイスやコロンビア、パタゴニアといったブランドの生地を解体し、再構築された唯一無二の存在です。
「都会と自然をつなぐ溜まり場」
店のコンセプトとして掲げるのが「都会と自然をつなぐ溜まり場」。都会の真ん中に位置する店だけに、家族連れ、若者、主婦など幅広い客層が訪れます。中にはキャンプに興味はあっても、費用やスキルの面で二の足を踏む人も多いそう。そんな時には「ピクニックから始めてみませんか」と提案するといいます。
キャンプの目的は日常を離れて自然に触れること。そこでまずアウトドア用のグランドシートだけ買って公園に行ってもらう。陽の光を浴び、風を感じながら、移り変わる景色を眺める。忙しい日々を忘れて一息つく時間をまずは味わおうというのです。
次に温かい食事をするなら食器やバーナー、快適に過ごすならイスやテーブル追加、焚き火がしたくなればいざキャンプ場へ。「そうやって徐々に自分なりのスタイルが定まっていくんです。やりたいことにマッチしたギアも提案します。都会から自然への第一歩を踏み出すためなら全力で後押しをしますよ」と西田さんは語ります。
スタッフのおすすめ3選
REIのヴィンテージチェア
アメリカを代表する老舗アウトドアショップ「REI」。中々お目にかかる機会のない1980年代の希少な折り畳みチェア。よっぽど保管していた環境が良かったのか、40年ほど前の品とは思えないコレクター垂涎の逸品です。
成山さんの一言メモ「ヴィンテージやユーズドのキャンプ道具が好きな人におすすめ。レトロなたたずまいは自宅に置いても様になります。えんじ色の同型のイスは売れてしまったので唯一の在庫です」
Carhartt(カーハート)のリメイクポンチョ
東京のリメイクブランド「redad(レダット)」に別注をかけたオリジナルのポンチョ。カーハートのオーバーオールを軸に、アウターやパンツを解体して再構築した一点もの。展開すると四角い形状なので地面に敷いて座るラグとしても活用できます。
西田さんの一言メモ「羽織って暖を取るのはもちろん、焚き火時には火の粉から全身を守れます。ポンチョやラグとしてハードに長く使い続けてもらえるのでおすすめです」
Rab(ラブ)の「MYTHIC ULTRA 360」
イギリス発のアウトドアブランド「Rab」が今春リリースした寝袋。極限の環境下に対応する軽量でコンパクトなハイエンドモデル。世界初の熱反射性テクノロジーを採用し、チタンコーティングした繊維で放射熱を保ちます。結露に強い撥水ダウンを使用し、あらゆるシーンで活躍します。
西田さんの一言メモ「寝袋をルーツに持つRabの技術の結晶です。アルピニストによる性能テストがなされていて信頼感があります。ほかにはあまりない黒と銀のシックな色合いが個性的です」
まとめ
アウトドア感度の高い個性あふれるコンビが営むグラウンド・デポ。最新のアイテムからヴィンテージ品まで取り揃え、アウトドアブランドの奥深い魅力を発見できますよ。ブッシュクラフト、雪中キャンプ、登山や釣りに至るまで、豊富なアウトドア経験に裏付けられた確かなアドバイスを受けらえるのもうれしいポイントです。
多くの人を自然に誘うための仕掛けとして、キャンプ場でのギア体験会などのイベントも開催されています。参加したい人は公式のインスタグラムの告知をチェックしましょう。
「THE GROUND depot.(グラウンド・デポ)」基本情報
所在地:大阪府大阪市西区南堀江1-15-5
営業時間:11:00~20:00
電話番号:06-6563-9674
公式サイト:https://thegrounddepot.com/
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/thegrounddepot_201/
※年末年始の営業予定は公式サイトをチェックしてください。