【東京都大島町】近くて遠い離島の澄んだ海と広大な都営キャンプ場で釣りに海遊びと大自然を満喫

公開日:2022 / 09 / 05
最終更新日:2022 / 09 / 05

東京都に属する伊豆大島(東京都大島町)は伊豆七島の中で最も大きく、最も本州に近い人口約7,000人の島です。大島の東側の原生林の中にある「海のふるさと村キャンプ場(海ふる)」に8月初旬、息子夫婦と孫娘2人、それに仕事関係のキャンプ好き仲間5人が加わり2グループ、総勢10人で離島キャンプを楽しんできました。

海ふるは東京都が1986(昭和61)年にオープンした都営キャンプ場で、大島町が管理・運営しています。周りに集落もない原生林を切り開いて整備した自然を満喫できる広々としたキャンプ場で誰でも利用できます。 

施設は充実していて、6人泊まれる管理棟があるセントラルロッジ8部屋、備え付けの6人用デッキテント10張、フリーテントサイト(約20張分)があり、貸しテントもあって、空いていれば好きな宿泊形態を選ぶことができます。

28年間“ほぼ毎年”訪れてきた「海ふる」


筆者が小学1年と幼稚園の2人の息子を連れて初めて訪れたのは28年前で、当時はテントを担いでいきフリーテントサイトを利用しました。

その後もほぼ毎年、友人やその子供たちも加わり多いときは20人以上の大所帯でこのキャンプ場に来ています。歳を重ねるにしたがい持ち込みテントからデッキテント、ロッジと楽なキャンプを求めるようになりましたが、自炊と海遊びは変わりません。

「ほぼ毎年」と書いたのは、最初のころは八丈島や神津島、式根島のキャンプ場、海ふるの予約が取れない年は民宿にも泊まったことがあるからです。しかし、海ふるは施設がきれいに整備され、急勾配の山やプライベートビーチのような海、キャンプ場内はサルやリスが出没する木々に囲まれ、雄大な景観を居ながらにして楽しむことができるし、開業以来36年間、料金が据え置かれていて廉価に利用できるのも大きな魅力です。

そんなわけでいつのまにかホームグラウンドのように利用していますが、毎年5月の連休に来ていて「わが家の別荘のつもり」と言っていた老夫婦もいました。

新型コロナの影響は「海ふる」にも


新型コロナ感染拡大の影響で昨夏は海ふるも営業を停止。今年はコロナ対策による三密回避のための利用制限を行いながら営業しました。

8月初旬、10人を2グループに分けて宿泊するなど変則的なキャンプながら例年より利用客も少なく静かな海ふるを楽しめました。8月までの海ふるのコロナ対策は、1日当たりの利用人数を絞り、セントラルロッジは8部屋のうち2部屋しか使用できず1部屋の人数も3人まで、デッキテントは4張、フリーサイトも4区画に制限して貸し出していました。

私たちはセントラルロッジ2部屋に6人、デッキテント1張に4人という分散宿泊にして、私は久しぶりにデッキテントに泊まりました。

デッキテントは、頑丈な木製デッキの上に、スチールパイプで骨組みを作り、それにかぶせた分厚い布製で台風が来ても吹き飛ばされない安心感があります。テント内はインナーはメッシュ窓の面積も広くて通気性も良く、大人6人が十分寝られる広さで、4人だと荷物スペースも十分確保できました。

食事は、東京から送った冷凍肉や調味料などと島内で購入した野菜や魚などの食材を使い自炊。今回の参加者は老若男女、年齢層も下は4歳から上は66歳まで幅広いため、食事メニューは簡単にできて食べやすいもの中心にしました。

大島キャンプの“名物”特製パエリアとシェフ(2年前)

パエリアパンを背負ってくる人が作ってくれる特製パエリアは皆のお気に入りだけど、今年は不参加で残念。

施設内に食堂はありますが、現在は人手不足とコロナ対策で営業していません。セントラルロッジには飲料の自動販売機はありますが、食材は売っていないので、持参するか、事前に発送しておくか、あるいは同じ泉津という地区にある武田商店に予約しておけば配達してくれます。

ただ、武田商店もいまは人手不足で配達できないこともあるとのことで、事前確認する必要があります。

大島へは大型船か高速ジェット船でアクセス


今回の私たちのキャンプは、総勢10名のうち4人が1日早く大型船「さるびあ丸」で6時間かけて着いて3泊。6人は翌日に高速ジェット船で1時間45分で到着して2泊でした。

さるびあ丸は夜11時に竹芝桟橋を出航し、朝5時に大島岡田港(海の状況次第で西側の元町港になる場合もあり)に到着します。私たちは毎年、桟橋の先で地元の人に交じって釣りをしますが、路線バスで大島公園に行ってのんびり散策したり、元町港まで行って御神火温泉に浸かってゆっくりするのもありです。

1日目の夕食は大人4人なので、北海道から取り寄せたジンギスカンなどBBQを食べながら飲んでくつろぎました。

10人そろった2日目は、山形のキャンプで覚えた芋煮。コストを抑えるために庄内風?豚肉の芋煮にしました。味噌とめんつゆなども加えたオリジナルな味ですが子供たちもしっかり食べたのでひと安心。子供たち用に「星の王子さまカレー」も作りました。

3日目は再びBBQ。串付きフランク、タンドリーチキン、子供用にハンバーグも焼いて具材たっぷり、賑やかに食べ飲みました。

建て替えられたり新設の施設もある

セントラルロッジは2段ベッドが3組または2段ベッド2組+ソファーベッド2台で、通常時だと計6人寝られます。風呂(今夏はコロナ対策でシャワーのみ)や休息スペースもあり、築36年ながらきれいに保たれています。

デッキテントは目立った傷みもなく、床には薄いマットが敷かれていて快適でした。分厚いフライシートとインナーとの間には十分なスペースの前室があり、大きなリュックや釣り道具なども置いておけます。1棟ずつ高床式のデッキの上に組み立てられているので、雨が降っても安心して寝ていられます。

各テントの横にもカマドやテーブルが備え付けられていますが、今回は4カ所ある共同炊事場の1つが我々のグループしか使わないとのことで、広い炊事場で煮炊きをして、すぐ横のテーブルで食事ができました。夕食時に短時間雨が降りましたが、新しく設置されたビニールの屋根のおかけで濡れずに食事ができました。

3年ほど前にキャンプ場内のシャワー室が建て替えられてきれいになりましたが、今回はトイレも建て替えられて、便器もすべて洋式に変わっていて使いやすくなっていました。

ただ、36年の間に、老朽化して姿を消した設備もあります。海に面したところにあった東屋は5年以上前になくなりました。海が良く見える2階建ての見晴台も老朽化してそのまま取り壊されました。子供たちの遊び場にもなっていたので残念ですが仕方ないですね。

でも一番残念なのは、キャンプ場内にあるプールがコロナ感染拡大の前から閉鎖されていることです。それほど大きくはないけれどきれいなプールで子供と遊ぶには最高でしたが、人手不足で維持管理が難しくなったとのことで今後も再開の予定はたっていないようです。

坂を下りていけば、砂は流されて石や岩だけになったメメズ浜と桟橋がありますが、波が立つと子供には少し危険で、プールがあれば家族連れも安心して遊べるのにと思います。

離島の澄んだ海での釣りと海遊び


波が穏やかなら桟橋から飛び込んで、シュノーケリングが楽しめます。岩場に沿って少し先に行くと魚も豊富で、45cmの巨大なタカノハダイを手銛で突いたこともあります。夜釣りで桟橋から投げるとイサキがよく釣れます。

大型船が岡田港(大島の北東側にある港)に朝5時に到着すると、毎年桟橋の先に行って釣りをします。シイラやウスバハギ、カンパチの子供、小鯵などが釣れましたが、今年はボウズ(何も釣れないこと)で夕食に刺身は食べられませんでした。

メメズ浜の北側には行者窟といわれるトンネルがあり、トンネルを抜けると大島公園まで5km強の海岸遊歩道があります。急いでいなければ海沿いをのんびり歩くのも楽しいと思います。

キャンプ場内には吊り橋もあり、子供に人気です。吊り橋の向こう側は森に囲まれた草地が広がっています。夜、吊り橋を渡ってキャンプ場の明かりも届かない真っ暗な草地に寝転がって満点の星空を見るのは子供だけではなく大人にとってもの最高のひと時です。

広葉樹林が生い茂っているキャンプ場だけにセミやクワガタ、運が良ければカブトムシも見つけられます。明け方などリスやサルに遭遇することもあります。炊事場に食料を置きっぱなしにしておくのは厳禁です。以前、ダンボールに仕舞っておいたマヨネーズがサルに食い破られていたことがあります。

今回は明け方、テントのすぐ近くの木の上で変な鳴き声のカラスがうるさいと思って出てみたらニホンザルでした。私の顔を見たら木の上を逃げていきましたが、私たちのイビキがうるさくて怒鳴っていたのかもしれません。

テントサイトからセントラルロッジを見ると後ろに急峻な山が壁のように立っています。すごいところにキャンプ場を作ったなあといつも感心します。セントラルロッジの横から木々の中の細い道を少し登っていくと、斜面に見晴台があり、キャンプ場の全景と海が見渡せます。隠れた見どころですが、いまも登れるのかは定かではありません。

海ふるの大きな魅力の一つが、都営の良さでもありますが、36年前の開業以来、値上げしていない利用料金の安さです。料金を少し値上げして老朽化が進む施設や設備のメンテナンスに充てるのも良いと思いますが、都はいまのところ値上げの方針はないようです。

鍋やコンロ、食器類などの調理用品はすべて無料で貸してもらえます。テント用の毛布も1枚200円で借りられます。大きな業務用冷蔵庫と冷凍庫は24時間利用でき、食材や飲み物の保管に重宝します。いまは釣り餌をいれておく冷凍庫もありますが故障したら補充できるかどうか分からないとのことでした。

海ふるならではの難点も…

もちろん、海ふる独特の難点もいくつかあるので挙げておきます。まず第一に、予約が取りにくいことです。

2か月前から予約を受け付けますが、8月の夏休み期間中の宿泊の予約は、受付時間の朝8:30から数時間はかかりにくい状態が続きます。ようやくつながったと思ったらロッジの部屋やデッキテントが残っていなかったこともありました。そんな時は仕方なく、民宿かほかの島にいくことになります。

次に、港から海ふるまでのアクセスが良くないことです。港から海ふるまで直行できる交通機関がないので、海ふるの送迎バスが来てくれる大島公園まで、港から島内の路線バスに乗らなければなりません。船の発着に合わせてくれるとはいえ、送迎バスは1日数本しか走らないので事前に予約しておかなければならないのも少しやっかいです。昔は港まで迎えに来てくれたのですが、運転手不足とのことです。

しかも数年前から、行き帰りは送迎バスに乗れるけれど、滞在中の移動には乗せてくれなくなりました。レンタカーがなければ、遊歩道を5㎞歩いて路線バスのある大島公園にいかなければなりません。まさに離島のなかの陸の孤島です。

大島にはフェリーで自家用車を乗り入れることができず、島内の移動は路線バスかレンタカーになります。路線バスは運転本数が少なく、時刻表をよくみていないと帰りのバスがない、なんてことになりかねません。レンタカーもコロナ感染以降、各社の保有台数が少なくなり何か月も前から出ないと予約で埋まってしまうので要注意です。

大島には海ふるの他にも無料のキャンプ場が


私たちも今年は、5人乗りのワゴン車1台しか借りられず不便でしたが、シュノーケリングに最適な秋の浜や野田浜に出かける際や買出しに活躍しました。

レンタカーは総じて、釣りの餌や魚の社内持ち込みはご法度です。匂いが残ったりシミが付くのを嫌うためですが、オプションで匂い漏れ防止のクーラーを提供するなど釣人向けのサービスを充実させてほしいものです。

大島には海ふるのほかにも、南側に無料の(予約は必要)トーシキキャンプ場があります。キャンプ場に受付事務所はなく、海に面した芝生のキャンプサイトに自由にテントを張ることができます。

トイレやシャワー、炊事場も整っていて、居心地の良いキャンプ場です。5、6分歩けば岩場だけどタイドプールのようになっていて幼児も遊べるトーシキ遊泳場があります。ライフセイバーも2人いるので安心です。


地図で見ると大島は伊豆半島と房総半島の先を結んだ位置にあり、外洋とはいいいにくいほど近くにある島ですが、海の透明度はかなりあってダイビングスポットもたくさんあります。東京湾奥の竹芝桟橋からだと時間がかかるけれど、高速船で熱海からだと45分、稲取からだと35分で着くほど近い島です。

私は釣りのほかに、スピアフィッシング(手銛による魚突き)も下手ですが楽しみます。大島では条例などで禁止されてはいないので、浅い岩場でブダイやタカノハダイ、メジナなどを突いても問題はありませんが、サザエやアワビなどの貝類は決して獲ってはダメです。

近年、密猟に神経をとがらせる漁業者が旅行者の魚介類の捕獲も厳しく監視して手銛でも大量の魚を突いたりしていると問題視されることもあるそうです。大島には突きん棒の職漁の人もいるので、ウエットスートにウエイトを巻いて深く潜ってたくさん魚を突くようなスピアフィッシングのベテランだと密猟とされかねません。

町役場や警察の人に問い合わせるなどして無理のない範囲で楽しみたいです。

私は海が中心で三原山には登ったことがないのですが、三原山登山や日本で唯一の「砂漠」である裏砂漠はこれが島なのかと思うほど雄大な景観が楽しめます。1986年の三原山噴火でできた御神火温泉や圧巻の夕焼けが見える露天風呂浜の湯は毎回の楽しみです。

雄大な島には来てみなければわからない魅力が


今後も新型コロナの感染状況によって利用制限を行うことになりそうですが、大島町役場から海ふるに出向している雨宮祐一郎村長によると「9月からはロッジの入室制限を解除して1部屋6人泊れるようになります」とのことでした。

離島である大島は本州に比べると医療体制も整っていないため、新型コロナ感染症対策には本州以上に神経を使います。人口減少や高齢化も進み、人手不足で施設や店舗などが営業を続けられないケースもあります。

しかし、都心からこれほど近くに青い海と山を満喫できる雄大な島があることは来てみなければわからない魅力といえそうです。

「海のふるさと村キャンプ場」施設概要

■住所:〒100-0103
東京都大島町泉津字原野2-1
■電話:04992-4-1137/1723
■予約方法:窓口または電話のみ。
予約は利用日の2か月前の朝8:30から。
■アクセス
路線バス:港から大島公園行きバス終点。
徒歩:海岸遊歩道で徒歩40分。
※大島公園発着の無料送迎バスあり(1日数回。時間は海ふるに確認)
■施設
〇管理棟およびセントラルロッジ  
・ロッジは6人用6部屋
休息スペース、入浴室、バリアフリートイレ、洗濯機あり
・冷蔵庫・冷凍庫、薪、炭
・貸出用具(鍋、BBQセット、食器類なべ、調理器具、ランタン、毛布等)
〇キャンプ場
・デッキテント
6人用が10張
・フリーテントサイト
20区画
・炊事棟、トイレ、シャワー
・キャンプファイヤーサークル
・プール(閉鎖中)
・テニスコート(閉鎖中)
■チェックイン:午後2時
■チェックアウト:午前10時
■料金
・セントラルロッジ
一般:2,000円 小中生:1,600円 学齢未満:800円
・デッキテント
1張4.000円+施設使用料(1泊):一般300円、小中生150円
・フリーテントサイト
施設使用料(1泊):一般200円、小中生100円
※利用規定や感染症対策等は変更される可能性があるので、必ず問い合わせてください。

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芳賀 由明

大学卒業後、スペインで就労。
帰国後、アフリカ料理店、全国紙などを経てフリーライターに。

得意分野は経済全般のほか観光、食文化、アウトドア。キャンプ歴は50年でいまも伊豆諸島などでキャンプと釣り・魚突きを楽しむ。前期高齢者の仲間入りを機にツーリング用自転車を購入。
カネも体力も無理しないポスト・ファミリーキャンプの楽しみを追求。

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