東を離れ、中部エリアへ!目指すは六根を清める「三徳山三佛寺」

東部エリアを満喫したら、中部エリアへと移動します。次の目的地は、「三徳山三佛寺(みとくさんさんぶつじ)」。
「鳥取港海鮮市場かろいち」から、車で45分ほど。景色は鮮やかな海辺から、紅葉に彩られた山へと移り変わっていきます。
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移動時間もまったく苦になりません。夕陽を染み込ませたようなオレンジ色の景色が、窓の外を流れていきます。
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おどろくほど背が高い木々に出迎えられて、まず到着したのは、「投入堂(なげいれどう)遥拝所(ようはいじょ)」。

遥拝所とは、遠く離れたところから神仏を拝むために設けられた場所。無料で使える望遠鏡が設置されており、これから向かう「三徳山三佛寺」の最大の目玉、「投入堂」の姿を拝めます。

ガイド役を引き受けてくださったのは、「三朝(みささ)温泉旅館協同組合」の広田発(ひろたあきら)さん。ここから「三徳山三佛寺」までご一緒していただきます。

三徳山三佛寺の奥院・「投入堂(なげいれどう)」とは

三徳山三佛寺は、標高900mの三徳山に境内を構える山岳寺院。山道に沿って、いくつもの寺院が点在してできています。一番奥の寺院は、国宝にも指定されている「投入堂」。断崖絶壁のくぼみに建てられた、歴史的にもめずらしい建築物です。

堂を支える柱の絶妙な配置と、きれいなアーチを描いた屋根は、建築美の観点からもすぐれ、建立時期は平安後期にまで遡ります。修験道(仏教の一派で、山にこもって修行する)の開祖、役小角(えんのおづの)が、法力で建物ごと平地から投げ入れたという伝承が今も語り継がれています。

引用:公益社団法人 鳥取県観光連盟 公式サイト

施設紹介
鳥取県東伯郡三朝町三徳1010▶MAP
お問合せ先:0858-43-2666(三徳山三佛寺)
公式サイトはこちら
(C)鳥取県

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望遠鏡を覗き、絶壁に建てられている「投入堂」に感嘆の声をもらしていると、「投入堂は、どんな技術で作られているのかも解明されていません」と広田さん。

ますます心躍ります。建築学が発達した現代において、いまだ解明されていない技術があるとは……。歴史の神秘を感じずにはいられません!

三徳山三佛寺の歴史を聞く。六根清浄の物語と、国宝の宿命

そしてついに、「三徳山三佛寺」に到着!
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地図をみると、山道に沿って、いくつもの寺院が連なっているのがわかります。「投入堂」があるのは、その最奥部。かつては修行の地として使われていた山道には、さまざまな「試練」が待っています。幅の狭い山道を抜けたり、頭上からつり下げられた鎖をつかんで登るなど、過酷な環境をくぐり抜ける必要があるのです。

現在は、鳥取中部地震の影響から、山道は封鎖されており、挑戦することは叶いませんでした。ですが、「三徳山三佛寺」の執事次長・米田良順(よねだりょうじゅん)さんから、寺院にまつわる貴重なお話を聞かせていただきました。
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米田さんは執事次長だけではなく、

  • とっとり中部観光施設ネットワーク副会長
  • 倉吉ユネスコ協会理事
  • 鳥取牛骨ラーメン応援団団長

と、色々な肩書きをお持ちです。

「『三徳山』のコースは、人間の生まれ変わりを表現しています。最初の『宿入り橋』はあの世を意味しており、途中、冥界から現世、母親の胎内などを通過しながら、『投入堂』にたどり着くことで転生を迎える。そんなストーリーを、登山を通じて体験できるのです」
本日何度目かの、冒険心がうずきます。
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米田さんの親切なガイドは、「もっと知りたい!」という思いが自然と湧いてきます。
「かつての『三徳山』は、六根(目、耳、鼻、舌、身、意)を清めるための修行の地でした。実は、過酷な道のりが用意されているのにも、ねらいがあるのです。これほど険しい山道を登っていると、参拝者の心は『登る』というひとつの目的に集中しますよね。つまり、雑念が取り除かれ、『無』の感情になり、おだやかな心で六根を清められるのです」

今回は、入り口のみの見学でした。この先にどんな道が続いているのかは、登ってみてのお楽しみ。
「門の奥には、人間の六根清浄の物語が刻まれているのです」といわれると、「次こそは必ず登りたい!」という感情に火がつきます。
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三徳山三佛寺本堂、宝物殿は通常通り参拝できましたが、鳥取県中部地震の影響で参拝登山はまだ再開されておらず、投入堂に思いを馳せます。

自然や環境に合わせて建物が作られているからこそ、災害の影響もダイレクトに受けてしまう。それが、歴史的建築物の宿命なのかもしれません。繊細で、いつ壊れてしまうかもわからない危うい存在。「国宝」という言葉の裏側に隠された、光と影を感じました。守っていかなければいけませんね。

ちなみに、米田さんのていねいなガイドは、三徳山三佛寺に問い合わせれば、一般の方でも受けられます。


六感を癒す名物温泉「三朝(みささ)温泉」

さて、すっかり日も暮れてきました。一日の疲れを洗い流すべく、向かうのは「三朝(みささ)温泉」。三朝の温泉は、高濃度のラドンを含む世界屈指の放射能泉です。温泉に浸かると新陳代謝が活発になり、免疫力や自然治癒力が高まります。

施設紹介
鳥取県東伯郡三朝町三朝▶MAP
お問合せ先:0858-43-0431(三朝温泉旅館協同組合)
公式サイトはこちら

三朝温泉「依山楼(いざんろう)岩崎」へ

「三徳山三佛寺に訪れたからには、ぜひとも行ってほしい温泉があるのです」
と、広田さんが熱っぽく教えてくれたのが「三朝温泉」。広田さんと米田さんにお礼を告げて、「三徳山三佛寺」から車を走らせます。12分ほどすると、「三朝温泉」のお湯を引いてきた旅館「依山楼(いざんろう)岩崎」の姿がみえてきました。
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闇に浮かび上がる立派なシルエットが、「依山楼岩崎」。宿泊せずに温泉のみの利用も可能です。
「近くには、北条オートキャンプ場などがあり、キャンパーの皆さまも温泉を利用されます」と教えてくれたのは、「依山楼岩崎」の販売部長を務める藤本貴広さん。
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「温泉の前に、まずは庭園をご覧になってください!」と、笑顔を浮かべる藤本さん。
ライトアップした光が水面に反射し、色とりどりの紅葉が陰影を帯びます。季節ならではの幻想的な光景は、四季折々に変化して、利用客を出迎えるそうです。
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「依山楼岩崎」の温泉は、「右の湯」と「左の湯」という2つのエリアに分かれています。温泉は合計12種類あり、「右の湯」に5種類、「左の湯」に7種類。時間帯に応じて入浴できる温泉が変わります。今回は、「左の湯」に入浴しました。

そして、その中のひとつ、「投入堂洞窟風呂」に心を打たれました。
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名前どおり、「投入堂」をモチーフとした洞窟風呂です。「投入堂」と同様、「左の湯」の奥、岩場のうえに位置します。そこは、ぞっとするほど静かで、静謐(せいひつ)をたたえた空間。周囲を囲われているからか、湯の音のほかに聞こえるものはありません。
自然と、おだやかな心地に。やがて、「無」の感情へ……。

施設紹介
鳥取県東伯郡三朝町三朝365-1▶MAP
お問合せ先:0858-43-0111(依山楼岩崎)
公式サイトはこちら

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